医療DXの取り組みとは?メリットやデメリット、成功事例も紹介

「医療DXに取り組みたいが具体的なイメージが湧かない」

「医師不足や長時間労働など多くの問題を抱えている。一刻も早く解決したい」

このような悩みを抱えている病院や歯科医院の方も多いのではないでしょうか。最低賃金や物価の高騰によって病院経営に逆風が吹いているのも事実。それらを解消するための手段として、「医療DX」があります。本記事では、医療DXの取り組み内容やメリット、デメリットなどについて詳しく解説します。

目次

医療DXとは?

医療DXとは、文字通り、医療業界で推進されるDXのことです。そもそもDXとは「デジタルトランスフォーメーション」を指します。端的にいえば、デジタル技術の活用によって業務プロセスを効率化することです。

企業の場合、クラウドサービスを導入して業務効率化を図ったり、データ分析によって市場開拓を行ったりといった活用がされます。

同じように医療DXでも、これまでの医療業務をデジタル化させることで、業務改善を図ります。たとえば、電子カルテやオンライン診療、インターネットによる診察予約などです。

医療DXが注目される背景

さまざまな業界で推進されているDX。とりわけ「医療分野」のDX化は注目されています。そもそも、医療業界は他業界と比べてデジタル化が遅れており、人手不足も顕著です。都会と田舎による医療格差が深刻化している現状もあります。こうした課題を解消するために、DX化が注目されているのです。

また、昨今は最低賃金や物価も高騰しています。それにともない、医師や看護師の人件費、薬や湿布などの仕入れ値などが高まっている背景も。コストは上がっているのにもかかわらず売上は横ばい、といった状況の中で、DX化を進めることで、少数精鋭での病院経営を実現できます。

医療現場が抱える課題

医療現場が抱える課題について、さらに詳しく解説します。とくに押さえておきたい課題は次の3つです。

  1. 慢性的な人手不足
  2. デジタル化の遅れ
  3. 医師や看護師の長時間労働

1. 慢性的な人手不足

数ある産業の中でも、医療業界は人手不足が顕著です。医師や看護師が足りないことで、一人あたりの労働時間が長くなり、離職率が高まるといった負のサイクルに陥っている病院も少なくありません。

また、日本は世界的に見ても医師の数が少ないです。日医総研が公表するデータによると、日本の臨床医指数(人口1,000人あたりの医師数)は平均2.4人でした。OECD加盟国35か国のうち28位であり、世界的に見て医師が不足している国といえます。

参考:医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2019- | 日本医師会総合政策研究機構

2. デジタル化の遅れ

医療業界には、デジタル化が遅れている現状があります。IPA(情報処理推進機構)が公開する「DX白書2023」を見ると、医療・福祉業界は「DXを実施していない、今後も予定なし」と答えた事業所が78.7%という結果に。これはすべての業界の中でワースト1位です。

カルテや薬剤など扱う情報がセンシティブなので導入にハードルを感じる、セキュリティに慎重になりすぎる、といった理由が考えられます。「そもそも医療情報をデジタルに置き換えて大丈夫なのか?」と不安視する声も多いようです。

参考:国内産業におけるDXの取組状況の俯瞰 | IPA

3. 医師や看護師の長時間労働

医療業界では、主要人材となる「医師」そして「看護師」の不足が深刻です。それによって一人あたりの労働時間が伸びている現状があります。

厚生労働省の有効求人倍率データ(令和5年7月に公開)を見ると、医師(歯科医師や獣医も含む)が1.91、看護師(保健師や助産師も含む)が1.95という結果に。全業種の平均が1.15であることを踏まえると、非常に高い数値といえます。

参考:職業別<中分類>常用計 有効求人・求職・求人倍率(令和5年7月)| 厚生労働省

医療DXの代表的な取り組み内容

ひと口に「医療DX」といっても、どのような取り組みがされているのでしょうか。具体的な内容を紹介します。

  1. オンライン予約
  2. オンライン診療・服薬指導
  3. オンラインによる資格確認
  4. 電子カルテや電子処方箋
  5. AIによる診断支援
  6. 介護施設との連携

1. オンライン予約

オンラインで診察予約ができる仕組みです。これまで直接受付や電話で行っていた予約を、インターネット上で済ませられるようになります。

2. オンライン診察・服薬指導

オンラインで診察を受けられる仕組みです。患者は、パソコンやスマートフォンのビデオやチャットを使って医師に診察してもらいます。薬剤師による服薬指導もオンラインで完結可能です。

3. オンラインによる資格確認

マイナンバーカードや国民健康保険証を読み込むことで、医療保険をはじめ各種資格の内容を確認できる仕組みです。スタッフは窓口ですぐに患者情報を確認できるようになります。

4. 電子カルテ・電子処方箋

これまで紙で管理していたカルテや処方箋をデジタル化させる仕組みです。院内における患者の診療記録や病歴、処方箋を一元管理できます。

5. AIによる診断支援

最近では、AIによる病気の診断支援も広がりを見せています。たとえば、レントゲンの写真があったとして、これを医師による目視だけでなく、AIが膨大なデータをもとに診断をサポートするといった方法があります。

6. 介護施設との連携

少子高齢化社会において、病院と介護施設の連携は必須といえます。高齢者の中には、基礎疾患をもっていて、病院に通いながら介護施設に通っている方も多いです。その際、病院と介護施設の双方でシステムを導入することで、カルテや健診情報、ケアプランなどを共有できます。

医療DXを推進するメリット

医療業界はデジタル化が遅れており、ITシステムの導入に抵抗をもっている経営者や院長も多いでしょう。ただ、「導入して本当によかった」と感じる方がいるのも事実ですが。医療DXを推進することのメリットについて詳しく解説します。

  1. 患者の満足度が高まる
  2. スタッフの負担軽減につながる
  3. BCPを強化できる
  4. コストが削減される

1. 患者の満足度が高まる

医療DXが進めば、患者の満足度も高まります。たとえば、オンライン予約によって診察の待ち時間が削減される、担当医が変わっても情報の引き継ぎがスムーズになる、などです。オンライン診察ができれば、医師不足が叫ばれている地域でも受診が可能に。患者の待ち時間や通院時間を大幅に削減できます。

2. スタッフの負担軽減につながる

スタッフの負担が軽減されるのも、医療DXの大きなメリットです。医療DXでは診察や服薬指導、カルテなどさまざまな業務をオンライン化できます。1つのシステムに患者の情報が集約されるため、見たい情報を探したり、後任に引き継いだりする手間も省けます。医師や看護師の労働時間短縮にもつながるでしょう。

3. BCPを強化できる

BCPとは、「事業継続計画」のことで、災害が起きた場合の対策内容を指します。たとえば、DXの一環としてクラウドシステムを利用している場合、多くは遠隔地のサーバーにデータが保管されるため、災害時のデータ消失リスクも低減可能です。

データを「紙」や「ハードウェア」に保存していた場合、火災が起こると消失してしまいます。バックアップも取れないためデータの復旧も困難です。しかし、クラウドに置き換えることで、こうしたリスクを抑制できます。

4. コストが削減される

DX化が進めば、結果的にコスト削減につながります。ITシステムを導入すれば、医療機関におけるバックオフィス業務が大幅に効率化されます。記録や計算が自動化されれば、これまで必要としていた「手作業」も不要に。その結果、人件費をはじめ、紙代や印刷代など事務作業に必要な間接コストも大幅に削減されるでしょう。

医療DXのデメリットと注意点

医療DXには多くのメリットがある反面、デメリットも存在します。とくに次の4つには注意が必要です。

  1. セキュリティに懸念が残る
  2. 一定のITリテラシーが必要
  3. コストと労力がかかる

1. セキュリティに懸念が残る

医療業界を含めて、DXでは「インターネット」が必要不可欠。データをクラウドで管理する場面も多いため、セキュリティに懸念が残ります。もちろん、ベンダー各社は強固なセキュリティ体制を構築していますが、情報をオンラインで管理する以上、漏えいリスクは拭えません。

とくに医療現場では診察や手術の記録、薬に関する記録など、患者のプライバシーな情報を扱います。そのためDX化を進める際は、検討するシステムのセキュリティ内容を確認する、情報を漏えいさせないためのマニュアルを完備するといった対策が必要です。

2. 一定のITリテラシーが必要

DXでは、「システムを導入したけど使いこなせない」といった失敗がよく起こります。ITリテラシーが低いスタッフに対してシステムの利用を促しても、結局使いこなせません。これは経営者側の「教育のミス」です。

これまで紙で管理していたものをデジタル化するわけなので、システムの操作方法やセキュリティリスクについて教育する必要があります。

3. コストと労力がかかる

DX化に取り組む際は、一定のコストや労力がかかります。たとえば、クラウドサービスを導入する場合、初期費用や月額利用料が発生します。システムによって料金形態は異なりますが、月間数万円〜数十万円がかかることも珍しくありません。

金銭面だけでなく、社内にシステムを定着させるための教育も必要です。「教える人材」を確保し、社内のITリテラシーを高めなければなりません。ただ単にシステムを導入するだけでなく、定着させるためのコストや労力も踏まえたうえで導入しましょう。

【コラム】医療DXを進めるべく政府も積極的に動いている

医療機関によるDX導入を推進するために、政府も積極的に動いています。具体例として、自由民主党政務調査会は「医療DX令和ビジョン2030」と呼ばれる提言を公開。この提言には、電子カルテの標準化や全国医療情報プラットフォームの創設などが盛り込まれています。

また、DXを推進する医療機関に対して、診療報酬を加算する制度も。条件をクリアすることで、加算点数が増える仕組みです。

医療DXの成功事例

最後に、医療DXに成功した病院の事例を2つ紹介します。

聖マリアンナ医科大学病院

画像引用:聖マリアンナ医科大学病院

聖マリアンナ医科大学病院は、神奈川県川崎市にて955の病床をもつ病院です。同院では次のようなDXの取り組みを進めました。

課題(導入のきっかけ)当初より「患者満足度をどう高めるか」を考えていた
DX推進の内容自院専用のアプリケーションを開発・提供した
結果患者と医師、他院との切れ目のない医療連携が実現された

当初より「患者満足度をいかに高めるか」を考えていた同院。2019年よりデジタルヘルス共創センターを設置し、ICTに取り組んできました。

その一環として2023年より、患者と医師のコミュニケーションを円滑化させることを目的に、スマホアプリ「マリアンナアプリ」を開発・提供。このアプリでは、通院予定や検査予定、処方箋など患者が自身の情報を確認できるほか、外来診療の待ち時間や駐車場の混雑状況も確認可能です。

聖マリアンナ医科大学と提携する外部医療機関との連携もスムーズに。アプリを用いて他院の医師に情報を引き継ぐといった使い方もできるようになりました。もちろん、医療情報は患者の同意のもと管理・共有。医師と患者、他院とのコミュニケケーションが円滑になったことで、「切れ目のない医療連携」が実現したそうです。

東京慈恵会医科大学附属病院

画像引用:東京慈恵会医科大学病院

東京慈恵会医科大学病院は、東京都港区にて1,075の病床をもつ大学病院です。同院では次のようなDXの取り組みを進めました。

課題(導入のきっかけ)当初から医療におけるICT活用に興味関心があった
DX推進の内容ICT活用の一環として3,000台を超えるスマートフォンを導入した
結果日常のやり取りだけでなく、患者の緊急対応もスムーズになった

同院では2015年から「先端医療情報技術研究講座」と呼ばれる、医療におけるICT活用の部門を設置。その一環として3,000台を超える院内スタッフ向けのスマートフォンを配布しました。

ソフトウェアとして、医療従事者向けのコミュニケーションサービス、顔写真付き電話帳、電子マニュアル、ナースコール受診などを導入。スタッフ間のやり取りや、患者からのナースコースに対してすぐに対応できる体制を整えました。

スマートフォンを快適に利用できるよう、院内全域に無線LANを整備。ただ、セキュリティに懸念があったため、電子カルテとはネットワークを隔絶したそうです。日常的な院内コミュニケーションはもちろん、患者の緊急対応にもスムーズに対応できるようになったといいます。

「自院オリジナルのシステム」を開発すれば、さらにDXの効果を高められる

DX化では、新たなITシステムを導入するのが定石です。その際、外部ベンダーのシステムではなく、「自院オリジナルのシステム」を作ることで、さらにDXの効果を高められます。膨大な情報を扱う医療業界においては、よりオリジナルシステムの必要性が高いといえます。

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【まとめ】DX化は医療業界の課題を解消してくれる有効な手段

DX化は、医師や看護師不足をはじめ、長時間労働、紙での情報管理など、医療業界の課題を解決できる有効な手段です。しかしながら、導入・運用にあたってコストや労力がかかるため注意が必要です。とくに機密情報や患者の個人情報を多く扱う医療業界においては、セキュリティにも注意を払う必要があります。メリットとデメリットを踏まえたうえで、自院にとってベストなDX化を進めましょう。

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